CRUSADE〜The end of "CRUSADE" Chapter 12 #89

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 美しき少女の肢体に、金色に光った糸が何本も絡み付いてゆく。細い手足を縛めようと、意志を持ったかのごとき滑らかな動きで魔力の糸が彼女に襲い掛かる様は、こんな状況でなければなかなかに興をそそられる光景であったが、ウィルはそれから目を放さずに肩で息をするので精一杯だった。
 カイルタークが手に力を入れると、ソフィアの腕に束になって絡み付いた糸がきつく締め上がった。少女の動きが、止まる。が――
 少女が、自分の腕を一瞥する。
 ウィルは背中に寒気を感じた。これすらも、この、大陸最高の術者たちの渾身の術すらも、彼女を足止めする事さえできないのか。
 が、さすがにそういうことはなく、束のうちの数本が、気泡が弾けるような音を立てて消滅したのみだった。
 しかし……
「ウィル。そう長くは持たんぞ」
 カイルタークの冷静な宣告に、ウィルは膝に手をつき屈んだまま頷いた。
 一瞬にして消滅させられることはなくとも、数本でも切れたという事は、彼女の力の方が上回っているという事の証明だった。間断なく、ぷつん、ぷつんと音がする。
 彼女を光の糸が縛めていられるこの間に、どうにかしなければならない。
 …………
(どーしよ。このあとどうするか考えてなかったなんてバレたら、殴られるくらいで済むかな)
 いや、済まない。タコ殴りだ。しかも蹴られる。カイルタークは手を出すより足を出す方を好む。リュートに至っては魔術を浴びせ掛けてくるかもしれない。恐るべき想像に身を震わせて、しかしそれが表には出ないように細心の注意を払いながらウィルは顔を上げた。
「……ソフィア、返してくれないかな」
 苦肉の策。一応、この女性は全く話の通じない存在ではない……はずだった。
 激怒しているでも、破壊に狂喜しているでもない、美麗な仮面のような少女の金の目が、青年を見据えた。薔薇色の、花びらのような唇が、僅かに動く。
「これは……この娘の望み……」
 答えてきた。ウィルはじわりと汗の滲んだ手のひらを固く握り締めた。
「かもしれないけど。駄目だから、こういうのは。その辺言い聞かせるから、返してくれ」
 少女は、以前のときのように、何かを深く考えるように瞼を閉じた。冷たい汗を感じながら、ウィルは腕に力を入れる。そして脳裏には……
 黄金の瞳の少女はゆっくりと、瞼を開いた。
「この娘の望みは敵を屠る事。邪魔をするならば、敵と、見なす」
 華奢な腕に力がこもる。その腕に絡み付く糸が半分以上、軽い音を立てて弾け飛んだ。
「ほんっと思った通り融通が利かないな!」
 唾棄するように言い捨てて、ウィルも腕を振り上げた。そして、この展開の可能性を考慮してあらかじめ脳裏に描いていた魔術を展開する。
「束縛の鋼線よ!」
 三人目の魔術士の技が、少女へと迫る。
 今し方引き千切られた分をあがなうように、その糸は少女の身体へと巻き付いた。それに続き、呪文を唱え直していた二人の術が完成し、再度手から放たれる。
「説得ができないなら、少しの間眠っててもらう! 考えるのはそれからだ!」
 束縛の糸を右手から放ちながら、ウィルは左手に別の魔力を集めていた。電撃系の攻撃魔術で、一時的な戦闘不能を狙う。いくら彼女が人を超えた存在だとは言え、身体自体はソフィアの――人間の少女のものだ。魔力の糸で肉体的にも魔術的にも自由を奪っている今仕掛ければ、気絶させる事くらいは恐らくできる。
 しかし、ウィルの攻撃を行おうという気配を察し、少女が目を見開いた。瞳に力が宿る。
 少女の魔力に呼応して、彼女を縛める糸が次々と切れて行く――
「束縛の鋼線よっ!」
 唐突に、高らかな女の声が響いた。ウィルから見て、ソフィアを挟んで反対側、つまりソフィアの真後ろから、第四の糸が伸びてくる。
「ノワール!」
「差し出がましい真似を致します事を、お許し下さい」
 暗黒魔導士に一言詫びて、女魔術士は、自分の指先を素早く動かした。糸は集約され太い綱になり、ソフィアの右腕を強く縛める。真後ろから引かれ、少女の身体がバランスを崩す。
「やれっ! ウィル!」
 カイルタークの声と同時に、ウィルは力を解き放った――
 その時。
「……いけない……!」
 魔術の発射に伴う炸裂音に掻き消されるように響くリュートの叫び。
 彼が気づいた危機を、ウィルも刹那遅れて、察知する。
 ソフィアが、艶やかな唇を素早く動かす。音は聞こえなかったが、一言、二言の言葉が紡がれる。
 呪文。――今迄、一度たりとも唱えなかった、呪文。
 少女を封じていた全ての糸が、一瞬にして切れ、虚空へと蒸散する。少女に突き刺さろうとしていた電撃も、気づいたときには消滅していた。たった何語かの呪文詠唱による、単純な魔力の放出だけで四人の術とウィルの攻撃を無効化したのだ。
(格が……違……っ)
 彼女は地を蹴った。身体を、前進させる。ウィルの方――もしくは、最初の標的である暗黒魔導士の方に。
 その全てが、瞬時のうちの出来事だった。
 魔術は――誰も間に合わない。彼女を拘束できるほどの力を瞬時に編み上げる事は不可能だった。少女の瞳。剣。煌き。切り取られたように、ウィルの目には映った。
 意識せず、彼は身体を動かしていた。
 暗黒魔導士への少女の攻撃を遮るように――いや、向かいくる少女を抱き留めるように。腕を、広げる。
「…………っ!!」
 声なき絶叫は誰のものだろうか。
 ウィルは、一点のみを見詰める事はせず、彼女の表情と、彼女の持つ二つの刃に全て均等に意識を払っていた。
 彼女の腕の筋肉が、収縮する。ボウガンから矢が射出されるような勢いで、刃が振り下ろされるのを、ウィルは黙って眺めていた。
 一つ目の刃。それを握るソフィアの左手。細く白く、花でも摘んでいるのが似合いそうな手が凶器を持って襲い掛かってくる。その手首に、ウィルは手を伸ばした。掴み上げる。
 二つ目の刃が、それより四分の一秒ほど遅れて襲い来る。左手のものより、少々長い短剣を、ウィルは手で殴りつけるように弾いた。手の甲に、浅く傷がつく。剣の軌道がそれた瞬間に、ウィルはソフィアの二の腕を掴み上げた。掴むと指がもう少しで一回りしてしまいそうな、華奢な腕だ。
「……ソフィアっ!」
 ウィルの対処は、魔術も通用しないような相手を素手で封じ込めるという無茶を除いてしまえば、傍目には非常に冷静で理性的に見えるものだったが、その実は、それは全く理性的とは対極にあるものだった。止めなければならないという思いがただ先走ってしまっただけの咄嗟の行動だったのだ。その証明であるかのように、とても効果があるとは本人すらも思えない、自棄になったような一言を、ウィルは叫んでいた。
「いい加減目を覚まさないと、公衆の面前でキスするぞ!?」
「ヤだ!」
 即答。
 …………。
 後に続いたのは、果てのない沈黙だった。

「おやぁ……?」
 先程の挙動に比べればあまりにものんびりとした仕草でソフィアは周囲を見回した。自分がその間にいる殆どの人間から注目されていて、さらに気がつくと、目の前のウィルに両腕を掴み上げられている体勢なのを知って、わあ、と悲鳴を上げた。
「何してるのよ、えっち!」
「え、えっちって……」
 ソフィアが力いっぱい腕を振るのに任せて、ウィルは手を解く。彼女は胸を覆い隠すようにその両腕を体に巻き、上目遣いに目の前の青年を睨み上げた。
「えっち」
 再度繰り返される言葉に、ウィルはどう答えていいものか判断できなかった。少女を呆然と見詰めながら、指先で頬を掻く。周囲からも全く声が上がらないという事は――同じような気持ちなのだろう。呆然とするしかない。へそを曲げた表情のまま、ソフィアはぷいと横を向いた。
「暗黒魔導士の人」
 黒衣の男の姿を認めて、ぽつりと呟く。先程見回したときに気づいてはいたのだろうが、ウィルへの文句を優先させたのだろう。
「暗黒魔導士の人、って言い方は言語としておかしいと思うぞ」
「あたしがやっつけようと思ったのに」
 ウィルの突っ込みは無視して、ソフィアは続けた。彼女の横顔を見ると、さも不服そうに唇を尖らせている。
 そんなソフィアを、ウィルは腕の中に抱き寄せた。
「いいよ。ごめん。俺が優柔不断だった。ソフィアが無理する事はないんだ」
「無理なんてしてないわよ」
「してるよ。ソフィアは優しい子だからね」
 吐息を絡ませながらウィルは指先でソフィアの耳に触れた。ソフィアがくすぐったそうに首を竦める。その直後、はっと気づいたように彼女はウィルを突き飛ばした。
「もう! どさくさに紛れて何してるのよ!」
 顔を、耳まで真っ赤に染めて抗議してくるソフィアに、ウィルは満足して笑いかける。彼女を視界の外に出してしまうのは名残惜しかったが、決意して目を閉じ、ウィルは顔を、暗黒魔導士の方へと向けた。
 彼もまた強力な術を使い続けていたはずだったが、彼はウィルほどには息を荒げてはおらず、このあたりに如実に力量の格差が顕在していると言えた。
「……リュート」
 呼びかけに、目深にフードを被った顔が応じて、闇の奥の瞳がソフィアからウィルへと移る。
「悪かったな。手間をかけた。もういいんだ」
 手近に使い慣れた剣はなく、唯一長剣はディルトの使っていたものだけがあったので、それをウィルは借りた。長剣以外の武器も、あまり特殊なものでない限りは一通り扱う事が出来るが、ウィルは剣が一番得意だった。見た目よりも筋力のあるディルトが愛用する剣は、ウィルがいつも使っているものよりも重量があり、腕に、初めて剣を握ったときに似た負荷をかけてくる。
 そしてその剣を、両手で握って、身体の前に掲げた。
 初めてのときと、同じ対戦相手に向かって、刃を向ける。
「もういいんだ……お前も、無理をしなくても」



 ――そして。



「う……っ」
 鈍痛に眉をしかめながら、ディルト・エル・レムルスは呻き声を上げた。
 身体の表面――特に胸のあたりが何かで打ち付けられたように痛む。殆ど無意識のうちに、服の胸元を鷲づかみにする形で彼は手を伸ばしたが、その手は途中で誰かに受け止められ、胸まで届く事はなかった。
「ディルト様」
 囁くような、女性の声。ディルトが薄く目を開けると、ぼんやりとした視界の中に影が映る。目を細めて目の前の人物に焦点を合わせて、それがソフィアであると彼は認識した。
「ソ……フィア……?」
 ひりつく喉から声を絞り出し、目に見えたその姿を確認する。掠れた音しか出て来なかったが、彼女はそれを聞き取って頷いて見せた。
「よかった。もう大丈夫ですね」
 心から安堵したように、ソフィアは目尻を下げた。ディルトには、初め、彼女が何を言っているのか理解できなかったが、しばしぼんやりと彼女の顔を見ているうちに思い出していた。
「そうか、私は暗黒魔導士の術にやられて……大神官殿が癒して下さったのだな。済まなかった。心配をかけた」
「いいえ」
 微笑んで首を振る彼女にディルトもまた笑顔を返して、ふと、未だに彼女の手を握っていた事に気がついて、大慌てで、しかし彼女に失礼にならないように手を退けた。ウィルが見たら、何を言われるか――
 その、嫉妬深い面もある彼女の恋人のことを思い起こしたときに、ようやくディルトは本当に、現在の状況について思い出していた。
 今は、戦闘中であるはずだったのだ。
「暗黒魔導士は!? ……ウィルは!」
 叫びながらも身を起こす。と、先程鈍痛を覚えた部分から、鈍痛というには少し強い痛みを感じ、ディルトは眉を寄せた。王子をいたわるように手を差し伸べてきたソフィアの目を、こんな事はどうでもいいと急かすように覗き込むと、彼女は一旦目を伏せてから、決心したように視線を大広間の中央付近へと向けた――



 結局。
 これは自分の役目だったのだ。
 ウィルは納得していた。押し付けられた思いでも、いやいやながら行う義務でもなんでもなく。
 これは、自分が、望んでいる事。
 ウィルの剣と、暗黒魔導士の剣が火花を散らす。
 かつての記憶に誤りはなく、今迄の戦いで剣を合わせてきた相手などとは格の違う使い手であった。彼に並ぶ達人であるソフィアと本格的な死闘を繰り広げた直後でなければ、今頃はとうに首を落とされていてもおかしくはない程の強敵だった。疲労が、彼の剣の鋭さを僅かばかり奪っていて、その僅かの差で辛くもウィルは生き延びる道を掴んでいるのだった。
 魔術士同士の争いではあったが、双方とも魔術を使う事は出来ないでいた。魔術は一般的には接近戦には向かない攻撃手段であり、至近距離に敵がいる際は使わないのが普通ではあったのだが、彼ら二人の場合は違っていた。常人では考えられない発動の速さを利用して、牽制程度の術を絡めて剣を使うのが、この師弟の戦い振りの特徴だったのだ。が――大掛かりな術を行使した後では、肉体的に疲労するのと同様、魔術的な能力も疲弊し、発動速度にも威力にも影響が出て来るようになる。彼らの特技は何ら意味を成さなくなっていたのだ。
 役目――
 心のうちで再度その単語を呟く。
 そう、これは、自分にしか出来ない役目。この、兄を救う事は。今迄、自分の望みを叶え続けてくれた、兄に対して弟として出来る最後の務め。誰にも譲れない。譲る事は出来ないのだ。
 この青年を――リュート・サードニクスという名の、優しくて、真面目で、優秀で、底意地が悪くて、誰よりも信頼していて、この世に唯一人しかいない自分の兄を――
「あああああああ……っ!」
 ウィルは、絶叫していた。それは我を忘れた悲痛な叫びではなく、脳裏に映る迷い全てを断ち切る鋏とするべく、自らの意志で生み出した絶叫だった。
 剣を、力任せに振るう。重量のある剣は、それに見合った威力で敵へと襲い掛かる。本来の暗黒魔導士にとってなら、そんな大振りなど単に隙だらけの悪手にしか過ぎず、楽にあしらってしまえるものであったのだろうが、疲弊しきった彼には、そこそこに速度のあるその一撃を躱す事は難しく、止む無く自らの剣で攻撃を受けた。硬質な衝撃が、暗黒魔導士の剣を通して、彼の華奢な腕の感覚を鈍らせる。そこへウィルは渾身の力を込めて剣を叩き付ける。
「……!」
 暗黒魔導士の注意が、指から離れかけた自分の剣へと瞬時、移る。
「……あああああああああああ!」
 ウィルの叫び声は、まだ続いていた。
 剣を、もう一度攻撃を仕掛けられる位置に引き戻す時間を惜しんだウィルは、剣を左手に預け、右手で固くこぶしを握っていた。そして、背後にまでしならせて振りかぶった腕を、武器に気を取られていた暗黒魔導士の顔面に向かって一気に繰り出していた。
 ウィルのこぶしが、暗黒魔導士の顎をしたたかに打ち付ける。
 剣の耳障りな金属音とは違う、有機的な衝突音が、響いた。
 不意に食らったその衝撃で脳震盪を起こしたのだろうか、暗黒魔導士は足をふらつかせた。そのまま、吸い込まれるように床へと崩れる。それが、初めて暗黒魔導士がウィルの攻撃によって、床に背中を接触させた場面になった。朦朧とした意識の中ですぐさま、暗黒魔導士は床に転げた剣の柄に手を伸ばそうと試みたが、倒れたまま手を伸ばして取るには少し離れすぎた位置に剣は落ちていた。
 暗黒魔導士は、ウィルが数歩の距離をゆっくりと時間をかけて接近してきた後もまだ立ち上がる事が出来ずにいた。無理もない。ウィルもまた、立ってはいたが完全に疲労は足に来ていることを自覚していた。もし万が一、自分がここで転んでしまったりすれば、彼と同じように立ち上がる事も出来なくなってしまい、さも間抜けな事態に陥るだろうと思うと笑いが込み上げてきそうになったが、何とか彼はその妄想を胸中だけに押し止めておいた。こんな極限状態で笑い出してしまえばきっと止まらない。精神の限界というのはそういったものである事を、彼は知っていた。
 何故そんなことを知っていたかという問いに答えるのは、余りにも簡単だった。ここにいる、この自分の兄に、訓練と称してそんな状態に陥るほどの虐待を受け続けていたからだ。
「……そう言えば」
 思い出したように――実際、本当にこの瞬間に思い出したことを、ウィルは呟いた。両手を地に付ける黒衣の男が、目の前で自分に向かって剣を振り上げている青年の姿を、恐れなど微塵も感じていない様子で見上げている。
「お前と何回も手合わせして、一回でも俺、お前をはいつくばらせた事、あったっけか」
「……ありましたよ。ほんの数回ですが」
 酷く澄みきった声音で、答えてくる。
「私が四十度の熱を出した時。階段で転んで捻挫していた時。両手に調理場から頼まれた卵を抱えていた時」
「しょーもないときばっかだなぁ……」
 かつての自分に呆れて苦笑すると、暗黒魔導士も口許を、楽しそうにほころばせた。それを見て、笑いながらウィルは、噛み締めるように呟く。
「そして、最後の最後までしょうもない」
「そんなことはありません。正々堂々とした勝負でした」
「五対一でやりあって正々堂々なんて言われると、立つ瀬ないよ」
 ウィルは不服をあらわにして文句を言ったが、剣は下ろさなかった。それに満足したように暗黒魔導士は頷く。
「いいんですよ。それで。あなたにはどのような手段を用いても、全力を賭けて敵を打ち倒す義務がある。この状況で相手に情けをかけなかったことは、あなたの成長の証です」
 言って、彼は草地に寝転ぶように、気持ちよさそうに黒大理石の床に仰向けになった。すぅ、と肺から息を吐き出す音が、戦いが終わって静寂が戻ってきた謁見の間に響く。
「さあ、ウィルザード陛下。この大罪人、暗黒魔導士ラーに正当なる裁きを」
 安らかな――今にも眠りにつこうとしていると思えるほどに、安らかな声。
 ウィルは、静かに目を閉じた。
「……いいだろう」
 儀式めいた声音で、言い放つ。
「暗黒魔導士よ。お前の望み通り、このヴァレンディア国王ウィルザード・アルシディアス・ラス・ヴァレンディが判決を下そう」
 宣告して、ウィルは刃を下に向けた剣を両手に持ち、暗黒魔導士の頭上で掲げた。

 意識を取り戻したディルトが目にしたのは、この瞬間だった。


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