CRUSADE〜The end of "CRUSADE" Chapter 11 #80

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「……いってー……」
 衝撃は、せいぜいが飛び箱に失敗して顔面からマットに突っ込んでしまった程度の――まあ痛いと言えばひたすら痛いが叫びだすほどではない、という程度だった。四つんばいの格好のまま、痛む鼻をさする。どうやら鼻血は出ていないらしいことにひとまずウィルはほっとした。状況は、やはりほぼ受けた衝撃通りで、つまりは、大した事のない高さから顔面着地したような状態だった。
(……くそ、リュートの奴)
 内心で毒づきつつ、顔を上げる。紫色の空、大地、木々。先程と変わらない『常闇の深淵』の姿だが、自分たちをぐるりと取り囲んでいた獣の群れがなくなっていることにはすぐに気付く事ができた。よく見れば、森と海の配置も変わっているかもしれない。色以外にはあまり特徴のない風景だったのでいまいち分かりにくいが、空間転移の魔術が行われた後であるならば、違う場所でない理由もないだろう。
「……いたぁい……」
 先程のウィルと同じような格好で、ソフィアが鼻をさすりながら呻いている。今の衝撃でへこんでしまったかもしれない鼻を元通りにしたいとでも思っているのか、鼻を指でつまんで引っ張っていたりする。彼女以外の皆ものろのろと起き上がり始める中、彼女は、ウィルの視線がずっと自分だけに向いていたことに気付いて、少し顔を赤らめた。
「そんなにじっと見ないでよ。また変なことやってるとか思ってるんでしょ」
「自覚あったのか」
「だって、何となく気にならない? ぶつけるとへこむ気がしない? 鼻って」
「うーん。なんとなく分からんでもないけど……」
 眉を寄せつつ曖昧な賛成意見を出しておく。他の人に話題を振ろうと周囲を見回していると、先にノワールが声をかけてきた。
「ウィルザード、大丈夫なのか?」
「……君に心配の言葉をかけてもらえるなんて考えもしてなかったよ」
「茶化している場合か」
「いや、だから君が言うなって」
 何となく酷い仕打ちを受けたように感じ、呻く。が、彼はすぐに諦めた。
「俺の術じゃなかったからな、あれ。撃ったのは俺だけど」
「どういうことだ」
 彼女なら悟ってくれると思ったが、意外にも不思議そうに問い返してくる。
「意識を乗っ取られた。ほら、あの『意識の接続』の応用技だろうな。人の描いた魔術の術式が、頭の中に流れ込んできたんだ。それも」
 一旦言葉を切る。そして、再度の台詞は目の前の女魔術士と同時に、目には見えないが確実にこれを聞いているだろう男に向けて告げる。
「何でだか分かんないけど、あれは……大神官カイルタークの仕業だった。……どういうことなんだ? なるべく分かり易く説明しろよ、カイル?」
『特に説明するほどのいきさつはない』
 声は当然のことを語るような調子で、返ってきた。

「聞こえない?」
 紫の大気以外は何もない空間を見上げるウィルを、きょとんと見詰めていた二人、ノワールとソフィアに、ウィルは問いかけたが、彼女らは首を横に振るだけだった。ウィルにはすぐ傍で話しているかのようにはっきりとカイルタークの声は聞こえるのだが、二人にはこの声は届いていないらしい。元々、精神に直接作用する魔術の応用なので、この声が実際の音になっている訳ではない、というのは理屈では分かるのだが、何か変わったものを見るような表情で凝視されていると、どこか不思議な――と言うか、居心地の悪い気分になってくる。ウィルはなるべく声に出さないようにして、カイルタークへと語り掛けた。
(何でお前なわけ? リュートじゃないのか?)
『今それを話しても構わんが、あまりのんびりしていると接続が切れるぞ。私は困らないがな』
(……ってことは、俺たちが元の世界に戻る方法を持ってきてくれたってわけだな?)
『まあ、そうなる』
(早く教えろ)
『…………』
(教えて下さい)
『必要なものはお前とソフィアだ。彼女はそこにいるな?』
 カイルタークにもノワールと同じようなことを問われて、ウィルはソフィアの方をちらりと見てから――彼女は首を傾げたが――心の中だけで頷く動作をした。
(いるよ。ソフィアが必要だって話はノワールにも聞いた。それと、俺も?)
『……正確には、ソフィアと魔術の制御力の高い魔術士、だそうだ』
(だそうだ、って……もしかしてそこにいるの? あれ)
 カイルタークの次の答えが帰ってくるには、少々の時間を要した。
『あれとか言うな、だそうだ』
(いや別に中継せんでも)
 思わず顔をしかめる。会話が聞こえていないソフィアたちからは奇妙に見えるだろうが、それに構っている場合ではなかった。
(まずはともあれ、元の場所に戻ってから、だな。俺たちはどうすればいい?)
『……心を通わせる』
「…………はい?」
 耳を不意打ちした聞き慣れない言葉に、思わずウィルは声を出した。呻いて、頭上を見上げて、目を閉じて、開きっぱなしになっていた口も閉じて、考える。が。
(もう一度言ってくれる? 何だか、とっても単純な発音だったのに聞き取れなかった気がするんだ)
『ソフィア・アリエスと、術者が、心を、通わせる』
 やはり、聞き間違いではなかったらしい。
 およそこの大神官が吐くには相応しからぬ言葉が、再び同じ口から紡がれる。苦行に耐えるように眉間に皺を寄せるウィルを、ソフィアたち――いや、いつの間にか残りの三人も彼に注目しているようだったが――ともあれ、周囲の人間は心配そうに見ている。
『……そろそろ限界だ。一度しか言えない、よく聞いておけ』
 直前に受けたショックは未だ抜けきっていなかったが、カイルタークの、普段のどうということはない会話においてすら年齢にそぐわない威厳の感じられる低い声に、ウィルは従い、耳を傾けた。
『こちらへ帰還する方法は一つ。ソフィアの魔力をお前が制御し、次元壁を破る魔術を使うのだ。魔術の術式は……理論は昔教えたと奴は言っている。忘れているなら死ぬ気で思い出せ。彼女の魔力を引き出せれば、他に難しいことはない』
(魔力を引き出すって……)
『技術的には問題無い。ルドルフ・カーリアンが行使できる程度の術式だ。お前なら出来ない道理はなかろう』
(ルドルフ? やっぱり、あれはルドルフが操っていたのか?)
『そうだ。彼女が、お前を心から信頼して魔力を明け渡せば……』
 声が途切れるのは唐突だった。
 ぷつり、という音さえ残して、カイルタークの声の気配が消える。
「お、おい、カイル!?」
 もう聞こえないのは分かっていたが、思わず叫んで――その後に続いた沈黙にウィルは絶句した。
 これ以上カイルタークが何かを伝えることもなかっただろう。だから、会話が切断されても問題はない……が。
「どうしたの?」
「うーん……」
 眉を寄せて彼の顔を見詰めるソフィアを見下ろしながら、ウィルは小さく唸っていた。



 珠のような汗に濡れた額を、カイルタークは手の甲で拭いあげた。
 さすがに、重労働だった。異次元間の通信などという慣れない魔術も十分に大変なものだったが、まずかったのはやはりウィルを介して魔術を放ったことだろう。自分の手元に魔力を集めていなかったため、万が一暴走しても被害を被るのはあちらだっただろうから気兼ねなく力を振るったが、限度を考えずに魔力を使ったお陰で、肝心の会話はきりの悪いところで切断する羽目となった。もっともこれ以上伝えるべきこともなかったのだから問題はないのだが。
 彼はゆっくりと視線を動かして、数メートル離れた所に立つ黒ずくめの男を見やった。その男も珍しく発汗したのか、黒いフードで覆われた顔を、手のひらで拭っていた。
「まったく、貴方が攻撃なんてするから、思わずつられて転移魔術をかけちゃったじゃないですか。ここからあの人数を動かすなんて、どれだけ労力がいると思ってるんです」
「言いがかりではないか、そんなもの」
 襟元を広げようと首に手を伸ばして、カイルタークは自分の服装が普段の法衣ではなかったことを思い出した。息苦しいのは魔術を使ったからだけではなかった。身体に張り付くような黒革の衣服の、首もとの金具を外し、息を吐く。
「これで、よかったのだな?」
「はい。……ありがとうございます、カイルターク。あの術は、私の魔力では行使出来る代物ではなかった。貴方がいなければどうすることも出来ませんでした」
 率直な感謝の言葉を述べて、暗黒魔導士が小さく微笑む。酷く寂しげな笑みに、カイルタークは舌打ちをした。
「散々敵のふりをした挙げ句、都合のいいときばかり人を利用して。やってられんな」
「ふりじゃないですよ」
 唇を尖らせているような調子の返答に、カイルタークは半眼を向ける。
「敵です。私と貴方がたは」
「よく言う」
 呆れて怒る気にもなれず、カイルタークはその言葉を鼻で笑った。相手も、気分を害するかと思いきやそうでもなく、可笑しそうにふふっと吐息を漏らしている。
「お願いしますね、あの方を。私の前に現れるまで命を落とす事がないように」
「知らんな。後は私に出来ることなどない」
「それもそうですね」
 少しだけ、軽薄さが取り除かれた黒衣の青年の声に、カイルタークは首を傾げた。己の知らない何かを問うようにではなく、見えかけた答えを探るように。そんなカイルタークから、暗黒魔導士はふいと顔を逸らした。
「貴方の目は嫌ですね。何もかも見透かされるようで、落ち着きません」
「ほう、お前からそういう言葉が聞けるとはな」
 興味深げに片眉を上げて、カイルタークが呟くと、暗黒魔導士は少々拗ねたように引き締めた口許だけが覗く、フードに覆われた顔を彼の方へと戻した。久方ぶりに見る、そしてかつてもごく希にしか見せなかった、この男の子供じみた表情に懐かしさを感じながらも、カイルタークは腹の中でそれを堪えた。
「お前は、完璧だと思っていたよ、リュート。少なくとも、私のように不安定ではない」
「不安定ですよ」
 そう呟いて男は嗤う。
「完璧な人間なんていません。人間は……絶対者にはなれない。それは神の領域です」
「ルドルフ・カーリアンのことか?」
 神の領域を犯す男。ウィルなどが知るところではないはずだが、かの皇帝は、教会内部からもそのように危険視されている。故にこそ、教会の裁定者たる大神官が、彼を裁くこの戦に深く関わっているのだ。カイルタークの参戦の理由など、しばらくの間はファビュラスに神官としての籍を置いていたこの男なら、薄々は想像がついていただろうが。
「……実は彼の気持ちも分からなくはないんですけど」
 軽い苦笑を交えながら、黒いローブに緩やかに包まれた肩を竦める。
「やっぱり無理でしたね。神の力を借りたと言っても……彼の頼る女神さえもが、もう既に一人の人間なのですから。皇帝陛下は破滅するでしょう」
「投降しないのか? 敗北が分かっているのに」
「しませんよ。私は、アウザール帝国皇帝、ルドルフ・カーリアン様の忠実なる下僕、暗黒魔導士ラーなのですから」
 誇らしげに胸に手さえ当て――演劇のワンシーンのようにカイルタークには見えたが――、暗黒魔導士はそう宣言した。自分の、胸に触れた指先を見下ろしながら、微笑む。必然的に下がった肩が、身長の割に細いこの青年の身体を小さく見せていた。
「最期まで主と共に。……もっとも、あの方も奥の手は最後まで取って置くタイプですからね。まだ何かあるかもしれません。それと私にも。元々そのつもりでしたけど、本気でやりますから。後悔するかもしれませんよ、カイルターク。私に今、とどめを刺さなかったこと」
 それは冗談のような軽い口調だったが、言葉通り、心の底から本気の言葉であることは間違いなかった。流儀に従って、カイルタークも口の端に笑みを浮かべる。
「そうだな……本気でやってもらわんと、こちらも面白くないし……何より、お前の望みが叶わんだろう」
 一瞬だけ、カイルタークが吐いたその言葉に暗黒魔導士は息を止めるが、すぐに苦笑としてそれを吐き出した。
「ええ」
 返す言葉は一言で十分だと思ったのだろう。言葉少なにそう言って、固く引き絞った笑みを向けてくる。
「楽しみにしてますよ。貴方がたとあいまみえるその瞬間を。……カイル」
「伝えておこう、リュート。お前の望みと共に」
 お前の――
 ウィルの手にかかって滅びたいという、お前の『終焉』――望みと共に。



「方法は聞いた。でも問題があるんだ、色々とね」
 どうしたの、というソフィアの問いに、かなりの時間を要してウィルが答える事が出来たのはその一言だけだった。ソフィアが「?」という表情で彼を見上げる。それもそのはずだった。時間が経ちすぎている。ソフィアにその問いを投げかけられたのはもう数時間も前で、今は先程の場所からまた少し移動し、森の近くで野営の準備に入っていた。
 しばしの間、ソフィアはあからさまに困惑顔で唸りつづけ、そしてようやく思い当たったらしくぽんと手を打った。
「お味噌汁……」
「ちょっと待てそれ以上言うな絶対違うから」
「冗談だから大丈夫よ。さっきの話でしょ」
 けろりと言ってくるソフィアに、今度はウィルが困惑しきった顔を向ける。
「どういう経路で味噌汁とかいうボケをかまそうとしたのかが非常に分かりにくいんだけど」
 呻きながら、ウィルは焚き火で炙っていた串刺しの果実に手を伸ばした。これも、この辺りで自生している植物で、露草の花のようないかにも食べてはいけなそうな青色の実であったが、焼くと、香ばしい獣肉のような匂いが漂ってきた。どうしてもそれを食すことへの不安は拭いきれなかったが、とうにこの常闇の深淵の食生活に慣れているらしいルージュがさもうまそうにかぶりついているのを見て、とうとう空腹に耐え切れなくなったのだ。もっとも、これだけ香しい匂いに抵抗していたのは彼が最後で、他の皆はもう既に思い思いの物体を胃の中に落としてしまっている。隣にいるソフィアも、両手の平を広げたくらいの大きさの固い木の実を半分に切り、くり貫いた器の中に、その辺りの木の樹液であるそうな、さらりとした乳白色の液体を注ぎ込んで飲んでいる。
「その白いの、どういう味がするの?」
「飲んでみる?」
 差し出された器の液体を恐る恐る口に含んでみると、僅かに甘みがあったが、喉を潤すに適した爽やかさで、露店でカップに入れて売ればそこそこの売り上げが見込めそうなものだった。基本的に先程から見る限り、だれもはずれを引いた様子はない。味的にはずれならまだいいのだが、毒性的にはずれだったら、こんな所では何も出来ない。ウィルはずっと冷や冷やしているのだが、他は誰もそんなことはお構いなしのようだった。ルージュが食べ続けていて平気だから大丈夫だと思っているのだろうが、身体に徐々に蓄積していく類の毒は、効果がいつ出るかは分からない。今突然、ルージュが意識を失うことだって有り得るのだ。
「ウィル、心配してないで食べられるときに食べちゃった方がいいわよ」
 ウィルの内心を見越して、ソフィアがにやりと笑う。何となく恥ずかしくなって、ウィルは手に取った、炙った肉の香りがする実に歯を立てた。
「……焼いた干し肉以外の何とも思えないんだけど……」
「でしょう?」
 口の中に広がる食感や味と、気がおかしくなってしまったのかと自問したくなるほどにギャップのある手の中の青い実をじっと見詰めながらウィルは首を傾げた。いくら生態系が違うからといっても、よくもまあここまで非常識なものが育つものだと自然の神秘に感動する。そして感謝もしなければならないだろう。
「なんだかなぁ」
 妙にほのぼのとした、一つの焚き火を囲む七人の晩餐の中で、ウィルは小さく嘆息した。
「で、どんな問題があるんだって?」
 ウィルの嘆息のボリュームに合わせたのか、囁き声で、ソフィアが尋ねてくる。もう一口、実をかじってウィルは返答までの時間を繋いでいた。
「……帰るには一つ、魔術を使わなきゃいけないんだけど……ちょっとうろ覚えでね。正直、自信がない。それと……」
「それと?」
「…………」
 言うべき単語は一つしか思い浮かばなかった。
 ――信頼。
 だが、それをウィルは口に出す勇気はなかった。彼女は普段通りに自分に話しかけてくれている。だが、今自分は、他にすがるものが何もなかったときのソフィア――エルフィーナから見たルドルフ・カーリアン程に、彼女の信頼を得ているとはどうしても思えなかった。そして、この言葉を口にすることはそれを証明してしまうことに他ならなかったから……
「ウィル?」
 にわかに表情を曇らせたウィルに、ソフィアが慌てたように呼びかける。
「いいのよ、言えないんだったら、別に。あたし、魔術のことなんて相談乗れないんだし」
(……違うんだよ)
 しかし、それすらも言えなくて。
 ウィルは、その場に立ちあがって、ソフィアや皆に背を向けた。
「どこへ行くのだ?」
「薪になる木を拾いに。一夜を越すには、少し足りなそうですから」
 背中から問いかけてくるディルトの声に、ソフィアを視界に入れないように彼女の死角の側から振り向いて、ウィルは答えた。
「一人で行くな。誰かと一緒に」
「大丈夫ですよ、すぐそこの森にしか行きませんから」
 言って、ウィルは誰の返答をも待たずに歩き出していった。

「…………」
 膝に肘を立て頬杖をつきながら、ディルトはウィルが入っていった森を見詰めていた。彼の力があれば、多少の面倒が起きても対処は出来るだろう。彼の力はよく知っている。だから、ディルトが心配していたのは彼の安全についてではなかった。
「ウィル……変だったな」
 誰を見るでもなく呟かれた一言だったが、それが誰に向けられていたかは、呟かれた当人に分からないわけがなかった。
「……何かあったのか?」
 初めて視線をソフィアへと動かして、ディルトが問うた瞬間、彼女はぎゅっとドレスを掴んだ。
「私……」
 徐に、声が上がった方を見る。先程のウィルと同じように立ち上がって、ブランが、ディルトの方を見ていた。
「やはり、見てきます。単独行動は心配です」
「あ……」
 それだけ言って駆け出すブランにつられたように、ソフィアもまた立ち上がる。
 思わずそうしてから、彼女はおろおろと周囲を見回した。わざと視線を外しているサージェンに、本気で感心がなさそうなノワール。その隣で、きょとんと自分の姉が走り去っていった森を眺めているルージュ。そして。
 彼女が自分の方を振り向いてきたとき、ディルトは我知らず微笑んでいた。苦笑にも近かったかもしれない。ただ、あのソフィアが、助けを求めるような眼差しを彼に送ってくることなど殆どなかったので、精一杯の力で後押ししてやりたいと思ったのは事実だった。
 小さく頷いてやると、彼女は意を決したようにウィルとブランが消えた森の中へ走り出していった。


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