CRUSADE〜The end of "CRUSADE" Chapter 8 #51

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 味方の魔術士たちが撃ち出した爆圧を、ソフィアは何よりも髪が乱れるのを気にして――下ろしたままのロングヘアは、一旦ぐちゃぐちゃになると手に負えないのだ――、慌てて身をかがめてやり過ごした。
 もちろん、その攻撃は自分たちに向けて撃たれたものではないが、吹き荒れる熱風と乾かされた砂塵、それらに小石すら混じったものが宙を躍る中が全くの安全であるとは言い難い。……髪に砂が絡むと洗うのが大変な事だし。
「もう、何なのよー」
 魔術士たちはどうやったのか中央の指令を受けたらしく、統率された動きを見せているが、彼女には何のことだか分からない。ぼやきながら何となく視線を上げると今度は、前の方から、上に向かって飛び出すような人影が見て取れた。
「……大神官……様?」
 更に訳が分からず、呟く。遠目だが、緑の衣を纏うその人影は彼のように見えた。魔術に、空を飛ぶ術があったのは記憶しているが、彼がどういった理由で今それを使うのかは理解出来なかった。崖の上に陣取る敵の紋章魔術士を倒しに行ったのだろうか? それとも、何か別の目的があるのだろうか。
 再び、大地が鳴動する。
「!?」
 一瞬、自軍の魔術士たちの再度の攻撃か、もしくは敵からの攻撃か、と思ったが、ソフィアはすぐに理由に気がついて、後ろを振り返った。今、彼女は隊列の最後尾についている。後ろを振り返って見えるのは、解放軍全軍が踏みしめてきたヴァレンディ渓谷のごつごつした地面だけである。実際、この時振り返った彼女の目に映ったのはその通りのものだったのだが――
 まだ姿は見えないが、確実に迫ってくるプレッシャーに、ソフィアはごくりと喉を鳴らして、唾を飲み込んだ。――そして同様の気配は、同時に前からも迫っているようだった。巨大な鳥の群れの羽ばたき……の様なものを、この喧騒の中、ソフィアの耳は捉えていた。
「……リタ様」
 ソフィアの傍らには、赤い竜を従えた少女がいた。彼女もまた、ウィルに言われた通りに軍のしんがりに配置されていたのだった。しんがりに力のある者を置くのは常套戦術ではあるが、おそらくこちらの方が安全であると考えてのことだろう。その彼女――リタに、小さく囁きかけると、彼女は宝石のような赤い瞳をこちらへ向けてきた。
「どうしたの?」
「軍の前の方から……何か来ます。何か、大きな鳥みたいなの。ウィル、気づいてないかもしれないから知らせて下さい」
「と……り?」
 不理解の表情で聞き返してくる。が、ソフィアに無言で急かされて、リタは慌てて竜に飛び乗った。
「知らせればいいのね? ソフィアは?」
 どうするの? と言うのだろう。尋ねられてソフィアは僅かに眉を寄せた。苦笑するように。
「あたしは……」
 言いかけて、ソフィアはちらりと、気にするように前方に目をやった。
「時間がないです。行って下さい」
「う、うん」
 竜が翼を一回だけ羽ばたかせる。と、軽々とその巨体は宙に浮かび上がり、魔術の障壁のその中を滑るように前方へ飛んでいった。それを見送ってから、ソフィアは唐突に、たまたま一番近くにいた名も知らない魔術士の腕をぐいと掴んだ。
「えっ?」
 さすがに驚いたように、その、魔術士にしては若い男は振り向いてソフィアの顔を見た。ソフィアとて、魔術を行使している最中の魔術士にちょっかいを出すのは御法度である事くらい知ってはいた。だが、男が何か文句を言い出すより先にその目を覗き込むように見詰め、崖の上の方を指差しながら叫ぶ。
「あの辺、魔術で崩して。早く!」
 ソフィアの剣幕に圧されたかのように、魔術士はこくこくと頷いた。



 程なくして彼の姿を見つけたリタは、
「ウィ……」
 ル、と言おうとして、はっとしたように言葉を飲み込んだ。
 彼は、何かに耐えるように――俯いたまま、爪を上腕に突き刺すようにして腕を抱えていた。上からでは見辛いが、表情も苦しげに歪んでいるようである。
「魔術……ウィルが制御しているの……?」
 リタ自身、以前魔術についてほんの少し学んだ事があるので、自分の能力を越えた魔術が心身に多大な負担を与える、という事は知っていた。ウィルの様子が、丁度そんな感じである事も、一見しただけですぐに分かる。
「何で……大神官さんは?」
 慌てて人込みの中を捜すが、彼の傍にはディルトはいたが、カイルタークの姿はどこにも見えなかった。
 これではウィルには話しかけられない。集中が乱れ、障壁が崩れてしまいかねない。おろおろとしながら、リタは周囲を見回した。視線と同じ高度にあるのは崖の両側壁のみで、気を休めることの出来る何かがある訳ではなかったが。と、しばらくただそうしていたリタだったが、不意にソフィアの言った事を思い出して、軍の遥か前方へ目をやる。
「そういえば、大きな鳥って……」
 呟きながら目を凝らしたリタの瞳にその影が映った瞬間、彼女はようやく理解した。
 もう、それはその姿を肉眼で捕らえられる範囲に現していた。
 巨大な鳥の『ようなもの』という表現は間違いではなかった。人ひとりを軽々と乗せることの出来る巨大な体躯。純白の羽根。力強い羽ばたき。だが、その姿は鳥ではなく――
「天馬!?」
 驚愕に、声を上げる。そう、それは天馬の群れだった。いや、群れ、という言い方は適切ではない。身体に戦闘用の馬装具を纏い、鎧を着込んだ人間をその背に乗せ、一糸乱れぬ陣形を組んで近づいてくるそれを、群れなどとは普通言わないだろう。
「天馬騎士……!?」
 驚愕の声は、地上からも上がっていた。
 目を見開いて、ディルトが叫ぶ。という事は、この王子も知っているという事だろう。アウザール帝国の秘蔵、『白騎士団』――天馬騎士団の存在を。
 天駆ける事風の如し、強きこと戦女神の如し――そう詠われる、美しき天空の騎士。
 迷ったように前方の敵と、足元のウィルたちの姿を見比べていたリタは、
「……行くわよ、バハムートちゃん」
 決心して、竜の翼をはためかせた。



「ディルト様……っ!」
 竜を駆るリタの姿を視線で追っていたディルトは、あえぐようなウィルの声にはっと彼の方に目をやった。額に汗を浮かせながら彼は、薄く目と唇を開く。
「ディルト様、リタ……止めて……」
 その言葉を紡ぐ作業に、更に体力を奪われたようにがくんと膝をつくウィルに、慌ててディルトは手を差し出した。ウィルは遠慮してか、小さく頭を振ってディルトの手助けを拒否したが、ディルトは無理矢理ウィルの腕の下に肩を割り入れ、彼の身体を支える。
「俺はいいから、リタを……」
「王女なら大丈夫だ。竜がついているのだ。敵などいない」
 既に、王女リタと竜は彼らの頭上を越えて行ってしまっている。今から止める事など出来はしないだろう。彼を安心させるように言った――とはいえそう信じていたからこそ言えた台詞に、ウィルは激しく首を振った。
「無理……ですよ! 確かに、バハムートの力は絶大だ……けど、リタ自身は、何の訓練も受けていない、ただのお姫様だ……訓練された部隊には……勝てない。並みの相手なら火力で蹴散らせても……っ」
「ウィル、喋るな!」
 言葉を、自らの荒い呼吸に遮られ、眉間に皺を寄せるウィル。魔術に関する知識は皆無なディルトには、こういう場合どのようにした方がいいのか、というのは分からなかったが、喋らせるのはよくないように思えた。どの道、どうした方がいいのかという点については、彼自身の方がよく知っているのだろう。言葉の代わりに、ウィルはディルトには意味を理解することの出来ない言語――呪文を小さく呟き始める。その魔力のお陰か、多少呼吸の乱れは少なくなったが、喋り始める前の状態に戻した程度にすぎないように見えた。ぎりぎりの所で魔術を支えている、というのは間違いないだろう。
「く……そっ……!」
 ウィルが毒づくその声は、飛来する雷の矢を障壁で掻き消す音に紛れて、すぐに消えた。



「私を……殺す? 貴方が?」
 防御の姿勢も攻撃の構えも取らないまま――口許に、微笑みすら浮かべて、暗黒魔導士はカイルタークに呟いた。そして、きっぱりと言い切る。
「無理ですね」
「無理ではない」
 だが、相反する答えも、暗黒魔導士のものと同じ断定的な口調だった。
「私の力を知らぬわけではあるまい。私ならお前と、十分に互角に渡り合える。……何よりも」
 すっと、上げられたカイルタークの腕の先に集約するように光が点る。
「私はウィルほど甘くない」
 音もなく打ち出された光は、彼の目の前に拡散した。一拍おいてから、何かを焼き切るような音。光が収まった視界には、地面には広範囲に渡って抉られたような跡と、根元から焼失した木々の跡のみが見られた。避けきれるはずがない。普通なら。
「成る程。さすがと言っておきましょう、大神官」
 だが、横手から聞こえてきた声に、カイルタークはさして驚くことなく視線を向けた。何事もなかったように、唇に柔らかな微笑を浮かべている暗黒魔導士と、再び対峙する。
 暗黒魔導士は初めてカイルタークに向けて腕を上げた。微笑と同じ穏やかさで、告げてくる。
「しかし、少々大味ですね。貴方がた、先天的に魔力の高い人間は得てしてそのような傾向があるものですが」
 打ち出される、閃光。
 一筋の細い光線は、カイルタークの耳の傍を抜け、彼の背後の谷すら越え、対岸の一本の木に当たった。
 僅かな音もなく、その樹齢百年はあろうかという巨木は焼失――いや、消失する。
「その上、貴方は先程までの障壁の魔術で随分、魔力を消費しているはずです。……それでは私には、勝てません。おとなしく退いた方が賢明ですよ」
「黙れ」
 小さく吐き捨ててから、カイルタークは呪文を唱え始めた。知りうる限り最高の威力を持つ、攻撃魔術を。

 ――――――――
「貴方の魔術には隙と無駄が多すぎるんですよ、カイル」
 手に持っていた木剣で、びし、とカイルタークの事を差しながら、目の前の少年はそう言い放った。肩の辺りで切り揃えた金の髪が、さらりと揺れる。額に汗を浮かべ、呼吸と共に僅かにではあるが肩を上下させているカイルタークに対し、少年はこの炎天下の中汗一つかいていない。
(化け物か、本物の……)
 内心、うんざりと呻き声を上げるカイルターク。
 ファビュラス教会の大神殿から少し離れた、荒野の真ん中。大掛かりな魔術の実験や訓練は、魔術士たちは教会内ではせずに、このような場所へ出て行う。ここ連日、彼に荒野に引っ張り出されては木剣を持たされ魔術の標的にされている……ような気がする。彼に言わせれば、来週に迫ったカイルタークの大神官候補生の選抜試験の為の特訓なのだそうだが、絶対に間違いなく取ってつけた嘘である。どこからどう見たところで彼の暇つぶしであるとしか思えない。第一、選抜試験には魔術の実技試験はあるが、剣技は全く関係ない。
 ふう、と優雅に息をつき、金糸の髪を梳き上げながら、少年――と言ってもカイルタークとは同い年だが――は、考え込むように目を細める。
「確かに、貴方のように、先天的に魔力の高い人間は得てしてそのような傾向があるものですけどね。魔力があり余ってるから、ちょっとくらい無駄使いしても事足りるんでしょうけど」
 少年は僅かに片足を後ろに下げ、カイルタークに対して斜めに構えた。木剣を下げていた腕を、肩の高さに上げる。これから攻撃を仕掛ける、という彼の予告である。
 幼い頃から一緒に育ってきた彼がどこで身につけたのだかは不明だが、彼は聖王国ヴァレンディアの騎士剣法に似た剣術を使う。おそらくは、彼が家庭教師の真似事をしているヴァレンディアの王子の所で覚えたのに間違いはないだろうが、もっと昔から同じような剣術を使っていたような気もする。ともあれ――
 開いていた間合いを正面から一気に詰め、迷うことなく振り下ろされた剣を、カイルタークは手の中の木剣で受ける。腕力はほぼ同等――力が拮抗し、両者の動きが、制止する。それはまばたきをする程度の一瞬に過ぎなかったのだが。
 どっ!
 何か鈍器で腹の辺りを殴られたような感触に、カイルタークは剣を取り落としそうになる。が、何とか堪え、目の前で剣を噛み合わせたまま、何やら難しい顔をしている少年を、元々鋭い目付きを更にきつくして睨む。
「普通至近距離でそんな魔術を使うか? まともに入っていたら内臓がやられていたぞ」
「ある程度強くしなきゃ、貴方の防御魔術を打ち破れないでしょうが。さすがに、防御と回復の魔術にかけては見事としか言いようがないですよ。……全く、こっちが何やっても防いじゃうんだから、面白味に欠けます」
 拮抗状態をこれ以上続けても埒が明かないと思ったのか、少年は剣を引いた。だが、身体は一歩も退かず、踏み込みもせずに打ち付けてくる。それを逐一剣で受け流しながらカイルタークは、面白味に欠ける、と言った少年の、その言葉通りの表情にぼそりと呟きかける。
「そして鬱憤晴らしにヴァレンディアに戻ってはいじめ甲斐のある王子をしばき上げる、か。……何というか知っているか、それ」
「嗜虐趣味とでも言いたいんでしょう。失礼な」
「よく分かっているようだな」
 言いながら、カイルタークは剣を突き出した。剣術に関しては、ほぼこの少年とは互角だったので、タイミングさえ上手く奪い取ればこうして攻勢に移ることもできる。僅かに焦りを滲ませて受けに回る少年に、一気に畳み掛ける。
 ひゅんっ!
 カイルタークの剣が宙を薙ぐ。躱された。
 一歩身を引いていた少年が、海色の瞳でカイルタークを睨む。剣の切っ先は、カイルタークの方へ向けられたままだった。
「氷竜の吐息!」
 少年の声とともに、剣先から、冗談のように猛吹雪が吹き荒れる。刹那、視界を奪われ、それに紛れた攻撃を受けないよう、カイルタークは身体に纏う防御の障壁を強化する。少年の放ったこの魔術自体は、上位魔術ではあるがカイルタークの防御術の前では決め手には程遠い。
 細かな氷の粒が煌き、乱反射する視界の隅に、影が映る。それに向かってカイルタークは魔術を撃ち出した。だが――貫いたのは、ただの氷塊。
 ひたり。
 背に優しく触れた、暖かな感触。
「言ったでしょう、隙が多いって。カイル」
 カイルタークの背に手のひらを当てたまま、少年は得意げにくすりと笑った。
「生まれつき魔力量の多い人は、技を練る事を怠って素質に頼りがちなんです。だから、私なんかに負けるんですよ。分かりますか?」
 説教をするように、告げてくる。
 ――本当は、いつでもそう一方的に負け続けたわけではない。彼に土をつける事も無論、あった。教会内では、このルーンナイトという肩書きを持つ少年と唯一互角にやり合えるとそれなりに有名だったのだ――
「魔術の素質だけを論ずれば、私など貴方や陛下の足元にも及ばないんです。だから、本来なら何度やっても貴方が勝たなくちゃいけない……」
「無茶を言うな。魔術の素質だけが戦闘能力の全てではない」
 その時は、そう答えたと思う。確か。
 そう答えて、少年が――リュートが、そうですけどね、と言いながらも、ひどく残念そうな表情をした理由はその時はよく分からなかった――
 ――――――――

 暗黒魔導士に向かってカイルタークが撃ち出したのは、一条の光線だった。
 腕の太さほどの光が漆黒のローブを貫く――残像が目に映る。
 本体は。
 見た目には同じような光線を、カイルタークは腕だけ横に向け、放つ。
「……っ!?」
 その直線上に姿を現した暗黒魔導士が、今度は避けるのが間に合わなかったのか、魔術で迎撃してくる。
 ごぅんっ!
 真っ正面からぶつかり合い、二人の魔術は白い焔を上げ、爆発した。
「……確かに、素質の力は大きいようだな。お前の言う通りだ」
 カイルタークは、独り言のように小さく呟いた。魔術による炎は、他に延焼する物がなければすぐに消える。炎が消え、爆発の余韻が収まった跡地には、両の足でしっかりと立つカイルタークと、膝と手を地面につけた暗黒魔導士の姿があった。
「特に今のような、瞬間的な魔術構成だと、緻密さよりも絶対的な魔力量が要求される。魔術に必要なだけの魔力を集約する速度は内在する魔力量によって決定されるから……だったな?」
 魔術の理論としては初歩に当ることを、確認するように呟く。気を抜かないまま、カイルタークは目の前の暗黒魔導士に立ち上がる時間を与えてやった。ゆっくりと、暗黒魔導士が地面から膝を離す。カイルタークの魔術に押し負けてはいたが、威力は完全に相殺しきっていたらしく、傷の一つも負ってはいない。
「そう何度も不意はつけませんよ。もっとも、貴方が本調子であれば私はかなりのダメージを負っていたはず。今ので決まらないのであれば、貴方の勝ちはありません」
 ざっ、と、暗黒魔導士の靴の底が地面を擦った。僅かに片足を後ろに下げ、正面に――つまりカイルタークに対して斜めに構える。
「最後の忠告です。退きなさい」
「断る。……私はお前を殺さなければならない。帝国軍最強の魔術士たるお前さえ倒せば、後はあの馬鹿が馬鹿なりに何とかするだろうからな」
 ――お前がリュートでなければ。
 カイルタークは再び、先程と同じ呪文を唱え始めた。自分同様、この暗黒魔導士には並の攻撃魔術では通用しない。元々攻撃魔術を得意としないカイルタークには、古代魔術級の大魔術を連打する事は身体にかなりの負担がかかったが――そんな事はどうでもよかった。
 ――お前がリュートでなければ、あの馬鹿は、お前を殺せただろう。
 カイルタークの魔術に対抗し、暗黒魔導士も呪文を唱え始める。挑むように、同じ呪文を。
 ――冷徹な軍師のふりなどをしているが、実の所は誰よりも戦いを嫌うあんな甘ったれに、自分の兄を殺す事など……出来ない。だが――
「私になら出来る、リュート!」
 僅かに。
 魔術の完成は、呪文を先に唱え始めたカイルタークの方が早かった。光が――視界を埋め尽くす――
「…………っ!?」
 カイルタークの背筋に、冷たいものが走る。
 本来ならこの術による光は凝縮され、一条の光線として纏め上げられるはずである。拡散などするはずがない。
(魔術構成に失敗した!)
 気付く。いや、知っている。魔術を失敗したその報い。制御を失った膨大な魔力の行き着く先。
 即座に術を切り捨て、防御魔術の構成を始める。無駄だとは分かってはいたが。
 制御という名の風船は爆ぜ割れ――その中に詰まっていた魔力は、術者もろとも辺り一帯を呑み込んだ。


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