談話
ああ、ネツァワルのロゼちゃん? 可愛いかったよねぇ、彼女。そしておっかなかった。
ほんっと、かつての戦場で《ベルゼ》の先代と並んでた姿は迫力があったもんだよ。何で戦場にこんな美男美女が並んでるのっていう異様な存在感を醸し出しながら、チャリオットのスキル・ディストラクトタックルもかくやって程の勢いで突撃して来るんだ。あれは怖かったね。
丁度僕と彼女は『同期』でね――ああ、うん、つまりね、たまたま同じくらいの時期に部隊長になったって意味なんだけどね。大体同じくらいの頃に同じくらいの苦労をしてきたんで、敵同士ながら妙な親近感があるのさ。
あ、知らなかった? うちの先代もね、例の作戦の時に戦死しちゃったんだよ。あの時は大変だったなあ。……普通にやってればさ、あの戦は結構いい線行ってたと思うんだよねぇ。勝ち切るのは難しかったとしても、武勇を示す事は十分に出来た筈なんだよ。当時の《ベルゼ》って言ったら飛ぶ鳥を片っ端から撃ち落してバーベーキューにして全部平らげるような勢いでさ、今だから言えるけどほんと、戦場で見かけたら速攻でホル戦辺りに逃げ込みたくなる気分になる相手だったから、ひと泡吹かせるだけでも僕たちには上々の戦果だったんだよ。ま、今でも十分嫌な部隊だけどね。
あの時……ああ、もう七年も前の話になるんだね……あの時は、国軍まで引っ張り出して、戦力もほぼ完璧ってくらいに揃えて挑んだ最高のチャンスだったんだ。なのにさ、その国軍が、勝てるものも勝てなくするような余計な事をしてくれるなんて誰が想像出来るかい? 戦場にたらればを持ち込むのは無粋だとは分かってるんだけどさ。奴らさえちゃんと勝つ気でやってくれればあんなことにはならなかったのにって今でも苦々しく思うよ。
そりゃあ国軍の言い分は分からないでもないさ。つまり、我が国にとって障害となる《ベルゼ》の親玉を始末したかったっていう考えはね。……でもそれは、余計なお世話だ。確かに彼は強い人だったよ。頭も良かった。影響力もあった。その首を取ってしまえば、千人からなる大部隊を壊滅させたに匹敵する戦果と言えただろう。
けど、だからどうしたって言うんだ。
いくら手強い相手だからって、身内を犠牲にして、勝利の可能性を丸ごと捨てて、あんなこすっからい真似までして潰そうだなんて誰も望んじゃいなかったよ。美しくないね。実に美しくない。
何より、そんなつまんない作戦で捨て駒にされた方はたまったもんじゃない。国益が何だ。正義が何だ。僕にとって一番大切なのは、身内の命だ。
……そんなだからさ、ぶっちゃけ、僕は国軍なんかよりよっぽどロゼちゃんの方が好きなのさ。
今の彼女? ああ、可愛かったって過去形の表現をした部分が気になった?
そうだねぇ、可愛いか可愛くないかって言うとあれだね。綺麗になった。
そんでもってより一層おっかない女になったよ。
【 Fin 】