初めてのxxx


 彼女といると俺は際限なく強欲になっていく。
 彼女の笑顔が見たい。彼女と手を繋ぎたい。彼女の髪に触れたい。彼女の唇にくちづけたい。彼女の――……
 これも、ずっと叶えたいと願っていた欲望の一つ。
「……入れるよ」
 告げた瞬間、横たわる彼女――俺の最愛の恋人は、肩をびくりと震わせた。強張る小さな身体が、無言で恐怖と羞恥を訴えかけてくる。
 でも、駄目。
 俺はそんな怯えに気づかない振りをして、彼女の中にゆっくりとソレを入れていく。入り口を掠めた所で震えた彼女をそっと宥めながら、より深く。誰よりも大切な女性に痛みを与える事がないように。慎重に。
 挿入したソレで彼女の内壁を擦り上げ、緩やかに中をこそぐ。
 その瞬間。彼女が小さく息を詰めた。
「痛かった?」
「ん、大丈夫……」
 答える微かな声に、俺は一旦ソレを抜き出して、彼女の頭をそっと撫ぜた。
「ごめんな。もっと優しくするから」
「うん……」
 健気にこくりと頷く彼女を心から愛おしく思いながら、俺は再びソレを、出来うる限り優しく彼女の中に入れ、ゆっくりと動かし始めた……


「……普通逆じゃないのかなあ」
 行為が終わった後の彼女の第一声は、そんな一言だった。
「ん?」
「普通は、女の人が男の人にやってあげるものじゃないかしら。……耳かきって」
 小首を傾げる彼女に俺は笑って、手に持った耳かき棒を指先でくるりと回した。
「一回してみたかったんだからいいじゃないか。男がやっちゃ駄目ってことはないだろ」
 可愛い恋人を膝に乗っけてそっと優しく弄り倒してみたいという欲望に負け、お願いしてさせてもらったのだ。耳かきを。
 ん? 何か別の行為を想像しましたか?
「だめではないけど、人に耳垢見られるのって物凄く恥ずかしいんだけど……。私、猫耳だし」
「猫耳?」
 って、たまに頭に装備してる人がいる三角のアレ? と思ったが、「ぺとぺと耳垢の耳のこと、うちのお母さんはそう言ってたよ」だそうだ。へぇ。
「大丈夫、綺麗だったよ。やりがいがないくらいに。次はもっと溜めておいてね」
 にこりと笑ってそう言うと、彼女は両手で可愛い猫耳を塞いでやーだー、と膨れた。
「じゃあ交代。今度は私がしてあげる」
「うん。お願い」
 手を出した彼女に耳かきを渡し、今度は俺が、正座した彼女の膝に頭を乗せる。
 ああ、するのもいいけどされるのもやっぱりいいものだな。特に膝枕っていう体勢がたまらなくいい。と少しおっさんじみた事を考えてしまい、ついでにおっさんじみた悪戯心が頭をもたげ、耳の下の太腿にすっと手を滑らせると、彼女がひゃあと悲鳴を上げた。
「もう、くすぐったいよー。危ないからそういうことしちゃいけませんっ」
「はいはい」
 小さな子供を叱る口調で言う彼女に従い、素直に手を引っ込める。全く以って色気のない反応に苦笑すると共に、暖かく満たされるような安らぎを覚えて、俺はそっと瞼を閉じた。


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