ツイッターの向こうの


「お前またツイッターか」
 パソコン室のPCの前に陣取る俺を後ろから覗き込んで、幼馴染の親友が声をかけてきた。
「わっ、何だよ国道(くにみち)! 覗きとか趣味わりーぞ!」
「悪い悪い、けど、ツイッターって世界中の誰でも見れるんだろ?」
「俺のアカは鍵付きだから見れんのはフォロワーだけだよ。ま、別に見られて困ることは書いてねーしいいんだけどよ」
 あ? いやこいつにはダメか。丁度昨晩、「親友の小学校の時の渾名が『十六号』だった」ってネタ投下したばっかだった。何せ国道だからなこいつ。
 まあそれはさておいて、学校はケータイ持込禁止だから、昼休みに学校でツイッターするのは覗き見の危険を孕んでいても開放PC使うしかねーんだ。
「今日も『ひなちゃん』かぁ?」
 国道は、俺の目的を察してにやにや笑いで冷やかしてくる。
「いいじゃねーか」
「悪いだなんて言ってねーだろ」
 ひなちゃんは今一番仲のいいフォロワーだ。俺のくだらないツイートにもよくリプをくれる優しい子だ。俺はフォロワーも少ないから、夜中とかは時々二人だけでチャット状態になることもあって、……内心ちょっとドキドキしたりもする。だって女子とサシで喋る機会なんて学校じゃ殆どねーもん。
 ひなちゃんは夜型らしくて、彼女が夜中に書いた分のツイートを昼休みに纏めて読むのが俺の昼の日課になっている。内容は他愛のない日常の話だけど、やっぱ興味ある子の事って何でも知りたくなるよな。
「お前もツイッターやってみろよ国道、楽しいぜ。あ、でもひなちゃんをフォローするのは禁止な!」
「ぞっこんですなぁ」
 国道は呆れたように苦笑する。まあ確かに俺も、顔も見たことねー相手に抱く気持ちとしてはちょっと強すぎるものを持っちまってるかな?って自覚はあるけど。
 でもこのひなちゃん、本当にいい子なんだ。疲れたり凹んだりして変な鬱ツイートをした時でも、凄く思いやりのある優しいリプを返してくれる。本当に心から俺の事を心配してくれてるって分かるんだ。
 ちょっとは自惚れたっていいんじゃねこれ?……なーんて思ったりも……いやいやいや、まさかまさか。
 でもマジでいつか本当に会ってみたい。きっと現実世界の彼女もいい子に違いない。そんなちょっとした恋心を秘めた指で、俺は彼女の名前を一文字一文字大切にキーボードに刻み込む。
 H・I・N・A――


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