死の帳面


 照り付ける真夏の日差しの恩恵を一身に浴びて、庭には青々と茂った緑たちが風に吹かれて揺れている。
「ねえ」
「うん?」
「私、あれが欲しいのよ」
「あれって?」
「ほら、あれよ、あれ。デスノート」
「……はい?」
「映画の。名前書くと死んじゃうやつ」
「はぁ」
「あれあると便利だと思わない?」
「べっ、便利って!? どうする気だよ、誰の名前書く気!?」
「誰のって、そんなのわかるでしょう」
「お、俺!?」
「何でよ。違うわよ、ほらそこの、庭の雑草。デスノートがあったらあのへん皆纏めて枯死させるのに」
「…………。」
「ねえ、便利よね」
「………………。」
「便利よね?」
「……………………で、でもさ、雑草、名前なんてないじゃん」
「あ、そうか! そういえばそうね! それじゃデスノートに名前書けないわ。残念、それは盲点だったわー」
「…………………………。」
 照り付ける真夏の日差しの恩恵を一身に浴びて、庭には青々と茂った緑たちが風に吹かれて揺れている。

【FIN】


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